鬼宿

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 しばらく歩くと朽ちた家々が見えてくる。車などはなく本当に荒れた大地と家しか見えない。辺りは夕暮れに包まれつつあり、いい具合に時間が過ぎたようだ。四人は俺が来るのを待っていて、ユタカは少し苛ついたのか態度が悪い。 「お前一人が遅れてんだから走って来いよ」 「まあいいじゃん、急ぎでもないんだし」  俺が何かを言う前にブンタが場をおさめ、さてそれでは、とパンと手を叩いた。念のためと肝試しのルールを皆で再確認し、ブンタが意気揚々と俺に話を振ってくる。 「じゃあ最後、オカルトマニアのタツキ氏から一言!」 「オカルトマニアじゃねえし。あー……そうだな、夕方は逢魔が時っつって化け物が出やすい時間だからお気をつけて」  この言葉に女子は何が面白かったのか大ウケで、ブンタも手を叩いて喜んだ。ユタカは若干白けたようだ。  んじゃレッツゴー、とブンタが声をかけ一つ目の家に入った。外はまだ明るいのだが、家の中は意外と暗く皆スマホのフラッシュライトを使って辺りを照らす。 「わー、すっごいね。マジ家の造りが昔じゃん」  電化製品らしいものはなく、土間の造りになっていて珍しいのだろう。中はゴミ屋敷のように荒れ果てているわけではなく、むしろ物はきちんとされたままだ。あちこちから草や竹など植物が生えてきており、荒れているのには違いないが綺麗な荒れ方だった。普通はこれだけ古い家だとあちこち朽ちてきて雨漏りから屋根が落ちたり床が抜けたりするものだが。おかしな例え方だが手入れをされた荒れ方だ。  ユウカ達は何もないね、とさっさと次の家に入り、そこでも似たような光景なので詰まらなかったらしくさくさくと別の家に向かう。どの家も思っていた以上に綺麗で数か月前まで誰かが住んでいたかのようだ。隙間から雑草は生えているし蔦が絡まっているからほんの数か月放置されたわけじゃないのはわかる。家の造りから言っても数十年は経っているはずだ。 しばらく歩いていると目立つ廃屋が見えてきた。 「でっかー……旧家っていうか、お屋敷って感じだね」 「村長さんの家とか?」 「まあ、地主とか金持ちだったんだろうな」  皆が口々に言っているのも無理はない。今見てきた家の2倍以上の大きさの家があったのだ。あちこち朽ちているがしっかりと建っていて崩れたりはしなさそうだ。玄関はうっすら開いていて、入ってくれと言わんばかりの見た目をしている。 「よし、本格探索はこの屋敷に決定」  ブンタがスマホで撮影の準備をする。ゆっくりと日が落ちてきて、そろそろ明かりが欲しくなってきた。ブンタたちは動画を上げる用にオープニングを撮り始める。ここがどんな場所で、今からここを探索しまーすとしゃべっていた。俺はその動画に誘われないし入らない。友達じゃないし、こいつらも根暗なタイプの俺を動画に入れたくないんだろう。  それにしてもライトにも使うし動画取るしネット使って調べるし、こいつらスマホの電池もつのかな。車に戻れば充電できるからと思いっきり使ってるのか。スマホは便利だけど多機能が一つの機械に集中し過ぎている。充電器があれば解決するからいいが、本当にいざという時の連絡手段として使うという事は考えてないらしい。
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