六丁目の角で

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そんな時に、山野さんに出会った。会った時は、入店して十日ほどだったような。まだ、慣れてなくて、当然擦れてもおらず、可愛らしい娘、といった感じだった。 「こんばんは、よろしくお願いします。」 手書きの名刺を差し出された。 「ありがとう。最近入ったの?」 「はい、入ったばかりなんですよ。まだ、良くわからなくて。」 「かわいいですよね。加藤ローサに、似てるって言われたりしません?」 ほんとにそんな感じだったので、そう言ったのだが、山野さんは少し恥ずかしそうに、照れた感じで笑ってくれた。 「じゃ、覚えて貰えるように、ローサ、って書いておきますね。」 山野さんはメモ用紙に、自分の源氏名とメアドを書いていたが、そこに”ローサ(はあと)”と加えて、破ってくれた。それが、山野さんとの始まりだった。
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