六丁目の角で

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今日の仕事のお礼を述べたり、山野さんが一通り名刺を渡したり、スタートの話が終わり、個々に話が始まった頃を見計らって、山野さんに声をかけた。 「さっき、見に来たじゃない?」 「あ・・・ 私を指名する人がいるなんて、どんな人か、確認しに来ました。」 「初めて?」 「うーん、初めてじゃないんですけど、初めてみたいなもんです。私、入ったばっがりなので、指名って慣れてなくて。でも、ありがとうございます。嬉しいです。」 山野さんは、今月入店した新人さんであったが、接客は卒ない感じだった。昼職で働いているからかもしれない。楽しく語らい、時間はあっという間に過ぎた。連れてきたお客も、それなりに満足したようだ。 この店は、退店する際に、その時についていた娘と指名した娘が見送ってくれる。山野さんが見送ってくれた。 「今日はありがとうございました。気を付けて。」 といって預けてあったジャケットを着せてくれた。僕の動きに合わせて、すっ、と羽織らせてくれた。彼女の物静かなやさしさが、心地よかった。 「こちらこそ、ありがとう。」 「また、来てくださいね。お待ちしてます。」 店の入り口に立った山野さんが手を振ってくれた。僕も手を振って、その場を後にした。
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