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「シルク様、ご夕食の準備が整いました」
重厚な書斎の扉をコンコンと叩き、トーチは室内に足を踏み入れた。伝統的なエプロンドレスを小さく揺らしながら、黄鉛の瞳で主人の姿を捉える。
「ありがとう、トーチ」
分厚い魔導書を読んでいたシルクは、トーチの呼び掛けに顔を上げ、にっこりと微笑んだ。白く美しい髪と、穏やかな黄緑色の瞳が、彼の動作に合わせてゆっくりと動く。
「何の本をお読みになっていたのですか?」
本棚に手元の本を戻す彼を見て、トーチは小首をかしげた。先ほどからずっと書斎に籠っていたので、何をしていたのか気になったのだ。
「火属性魔法の魔導書を、ちょっとね。やっぱり、色々な魔法が使えた方がいいかなぁって思ってさ」
少し恥ずかしそうな顔をするシルクに、トーチは「他の属性魔法をお勉強なさっていたとは、さすがです」と答えた。十七歳の青年である彼は、実に勉強熱心だ。
「まぁ、まだまだ全然だけどね。それはそうと、早く行こうか。『飯が冷めるだろ!!』って、カルミアに怒られちゃうからさ」
「はい、そうですね」
横に並んだ少し背の低いシルクに合わせて、トーチは扉の方を向く。頭に掛けたホワイトブリムと、ポニーテールに結ばれた茶色の髪が、きれいに重なった。
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