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そして、わたしやクラスメイトが前崎 彬文という人物を知り、親しくなり、昼休みを一緒に過ごすようになった、そんなある日のことだった。
わたしは、ふと、あることに気が付いた。
『あれ……?そんなところにほくろがあるんだ?』
季節が進んで夏服になり、それまでシャツに隠れていた手元が露になったせいで、彼の右手首の内側にあるほくろが自己主張を強めたのだ。
一緒に食べてた友人達は食後のおやつを求めて売店に行っていたので、ここにはわたしと前崎くんしかおらず、わたしの呟きのような疑問の宛先は名を添えずとも一人しかいなかった。
『うん?ああ、これ?あんまり言われたことないけど、そんなに目立つ?』
今まさにパンに噛り付こうとしていた前崎くんが、あんぐりと開いていた口をパンから離して自分の手首を確認するように見た。
『ううん、そういうわけじゃないけど』
特に目立つというわけではない、小さなものだ。
けれど、わたしにとっては、ちょっとした意味のあるものだった。
わたしは、もうずいぶん古くなってしまった記憶を手繰り寄せながら言った。
『……でも、同じところにほくろがある人を知ってるから、ちょっとだけびっくりしたかな』
『へえ……。珍しいな』
『やっぱりその場所って珍しいのかな?』
『さあ?俺は他の人で見たことないけど』
『ふうん……。ねえ、ほくろって、遺伝とか血縁とか関係ないよね?』
『突然どうした?』
『ええと……、実は、ちょっと人を探してて』
『その人の手首にもほくろがあるんだ?』
『そうなの。もう手がかりはそれしかなくて』
『また妙な手がかりだな』
ふうん…と、さほど興味を持ってない感じに反応し、前崎くんは食事を再開した。
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