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「ええ。そちらの岸里看護師は、私の娘です」
父がそう告げるのと、私の両目から大粒の涙が勢いよく落ちはじめたのは、もしかしたら同じタイミングだったのかもしれない。
それが判断できないほどに、私は、溢れ出る自分の感情に覆い尽くされてしまったのだった。
「それじゃ、岸里さんは、わたし達の、」
「孫……、なんだな?」
前崎さんも彬文さんも、かなりびっくりした顔をされていて、ああ、そんなに驚かれると心臓や脈に良くない影響が出るかもしれないのに……そんな危惧が頭には生まれるけれど、それを言葉に出すことは難しかった。
「―――っ、……っ……!」
いい歳した大人が、しかも、命の期限を目前にした患者さんの前で、その担当看護師である私が、こんなにもしゃくりあげて泣きじゃくるなんて、あってはならないことなのに。
わかってはいるけれど、それまではどうにか堪えてみせたけれど、もう、自分自身ではその手綱を握っていられなかったのだ。
自分には、ずっと、祖父母はいないと教えられていた。
父方母方ともに、私が生まれる前に他界したと言われていたのだ。
両親とも一人っ子で、だから私には従兄弟という存在がおらず、せめてお祖父ちゃんかお祖母ちゃんが一人でもいてくれたら、きっと、いろんな話を聞かせてもらえただろうに。
父や母のこと、もっとたくさん知られただろうに……
そう思いながら、向き合った長い夜もあった。
あの頃の幼い私が、それこそ時間を越えて、今、祖父母との対面を果たせたのである。
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