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堤防に着いたら
ちょうど陽が落ちた。
「星も月も見えないから明日は
雨かもしれませんね」
そう・・・総司のいない人生に
星も月もない・・・土砂降り。
「そこに見える桟橋、
総司さんのお気に入りの
場所なんですよ、私、そこで
プロポーズされたんです」
未菜の言葉が私の理性を刺激する、
その桟橋は・・・
私にとっても思い出の場所。
「有香さん、私とも仲良く
して下さい。新居にも
きて下さいね」
無邪気が邪気を呼んでくる・・・
総司がいない人生に
星だって・・・月だって
朝陽すら昇っては・・・
頭の中に
『未菜が現れなかったから
有香と友達夫婦でよかった』
昨夜の総司の声が木霊する。
目の前にはか細い未菜、
泳げぬ人魚が魔女に見えて・・・
私は信じられない強い力で
未菜を抱え、全力疾走で
堤防を駆け抜け、
・・・・・・・海へ!
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