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「よ!」
「…こんにちは」
木曜日。今日は職員会議があるとかで部活は休み。放課後は大体の人は遊ぶためにすぐに帰った。残っているのは図書室で真面目に勉強をしている数人くらいだ。
「今日も思い出探し?」
「うん」
部活をしている声も聞こえない、静かな学校。昨日と違って少し涼しい風が吹き、彼女の長い髪をサラサラと揺らす。
「ねぇ、写真見せてくれない?」
しばらく彼女が写真を撮っている姿を見ていたが、彼女がどんな写真を撮っているのかが気になって声をかけた。
「……どうぞ」
正直断られるかと思っていた。カメラと俺を交互に見て少し迷ったあと、差し出されたカメラを受け取る。
「…すげ、めちゃくちゃ綺麗」
「……ありがとうございます」
彼女が撮った写真はどれも綺麗だった。
学校の敷地内ばかりだったが、そのどれもがそうとは思えないほどに綺麗だった。
「あ、そういえば風景ばっかりだけど人は撮らないの?」
「あ、えっと…うん」
答え方に迷った様な感じだったが、言いたくないこともあるだろう、とまた手元のカメラに目線を戻した。
「本当に綺麗だよな。この学校じゃないみたい」
「……」
「別世界みたい」
首を傾げた彼女に少し笑って答える。
別世界みたいだった。現実味を感じない。なんだか不思議な感覚だった。
「思い出、もう少しで全部見つかる」
「そっか、頑張れ」
「…うん」
いつも表情を変えない彼女が少しだけ笑った気がした。
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