うちの「我が家」が家出しました、名前はタツルです。現在羽田沖で揉めてます。

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 「釘バットが最高なの、切ないのよ、、、結菜」 韓流ドラマで釘バットや金属バットで愛を語るのか? 寝ぼけ眼で、壁や柱を一撃で「ペチン」と叩き割る。 って、事も出来るのだが、父が足にすがって、必死に泣きつく。 「止めろー!終の棲家が、ついで済むか(てへっぺろ!)みたいになる!」 「逃げるな、小僧」 母、父、もはやオカルトだ、電源入ってないテレビに向かって二人で喋って、ケンカ吹っ掛けてるし。 「表に出ろ、愛情見せてみろ!」 「止めて、保々江さん」と父。 「お、おい!」 「死を覚悟して、愛を見せろ、さあ、金属バットだ」 と、サンダル履きで表に出る母、後を追う私、ただ今3時13分夜中だ。 「痛い!止めて!」 「こんな弱っちい奴に、あいつは渡せない!」 ボコッ!グギギっ!と外壁やら柱やらをぶっ叩く、ベキベキと剥がれ落ちるスレート拭きの瓦。 「あああ、保険が、修繕費が」 父よ、嘆いて、今壊されてるの一階の部屋だ、私はまだ大丈夫。 「下がるな!」 家に言う言葉でもないような。 「愛だ、、、ほら、釘バットだ」 突き出された母の拳、それは演歌で使うのでは? 「終わりましたか、破壊活動は?」 AIよ、こういう時は極めて冷静ではなくて良いぞ、許す動揺してくれよ。 「、、、ん?」 寝ぼけた母は止まった。 家への破壊は、ドラマの影響だった。 AIは母の強さを認めた、汗と涙で外壁が濡れていた、雨は降ってないけど。 そして、、、 ナスカの地上絵の様に、跡地にメッセージを残し、家は旅に出た。 「強くなります タツル」と。 「ただ今、、、まま、また、か!」 また家が消えた? 「あら、結菜おかえり」 「い、家!、、、いえーい!」 「切ないわよね、隣の石田さんと見たけど。愛を許されない二人が、釘バットで切り付けあうのよ。金属バットで友情と愛情を試してね、、、」 「そんな事言ってるばやいじゃ!」 スマホがワンワン着信した、メッセも盛りだくさん、緊急地震速報の間違い電話みたい!おっ、父か。 「おい、ニュース!うさぎ跳びしてる、我が家が、、、」 「はあ!」 スマホのニュース動画には、鉢巻を締め、神社の階段でゴキっドゴッっと、浮いたり沈んだりする「3LDKの一軒家」の雄姿が流れる。 「うさぎ跳びは、火災保険の範囲、だな」 「そうだね、逆上がり出来たら、褒めてあげよう、我が家だし」 壊れるのは、父の心だけにして欲しい。 こうして再び私の寝床を探す旅は始まった! 無事なのだろうか、ベッドは、寝床は、、、 眠れぬ夜は続く、だって家が無いから、ベッドも消えたから。 途絶えたGPSを手掛かりに、私は四国の山の中へと旅立った、家出した家を求めて。
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