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片想いの終わりに
10年以上の片想いが今、儚く散った――。
あんなに長い間真っ直ぐに好きだったというのに、終わりは案外あっけないものなのか。……どこまでも虚しい。
冷たい空気が鋭く突き刺さり、頬に痛みが走る。
まだ心の奥底が痛む、染みる。――仕方ないけど。
「ホント、馬鹿なんじゃないの」
急に声が降ってくるものだから、驚きのあまり涙が一瞬のうちに引っ込む。
「美佳、お前なんでここに」
「ごめんなさいね、たまたま通りかかって聞いちゃったのよ」
「そうか……」
「あんなにあさっりフラれちゃって、可哀相な男ね」
「容赦ねぇな……」
まったく、幼馴染なんだから少しくらい慰めたり、励ましたり、そういう優しい対応をしてくれたっていいじゃないか。
まあ、コイツにそんなこと求めたって、元の性格からして無理だろうけど。
無意識に、自嘲めいた笑みが零れ落ちる。
それでも、こうやって黙って側にいてくれるのは、コイツなりの優しさであるとわかっているから。俺はこれ以上なにも言うつもりはない。
ただ静かに、心の中で「ありがとう」とお礼を述べる。
しばらくの沈黙の後、ふいに美佳が口を開いた。
「私、明日香と健太がさっさとくっついちゃえば諦めつくかと思ってたの。でも、相手を好きな気持ちってそんな簡単になくせるものじゃないのね」
「……へっ?それってまさか――」
小悪魔のように微笑む美佳。
「そういうことよ、この鈍感バカ男」
「え、えぇーー!!!」
俺は思いきり叫んでしまった。
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