それはまるで運命のような

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それはまるで運命のような

 それから2週間後。まあ、ちょっとした事故みたいなものだけど、私からすればかなり困ってしまうような出来事が起こった。  「お母さん、ここに置いておいた紙袋は?」  「あー、捨てちゃったかな」  「え、嘘でしょ……」  「……ダメだった?」  「うん、あれ学校の書類入ってるから捨てちゃマズいやつ」  「ごめん……ちょうどさっきゴミ捨て場に置いてきた……」  母よ、積極的に片づけをしてくれるのは大変ありがたいが、せめて少しくらいの確認をしてからにしてほしいと、普段からあれだけ言っているというのに……。  ちらっと時計に目をやる。今から走ればまだ間に合うはずだ。  「ちょっと行ってくる」  私は家を飛び出し、全速力で駆け出した。これでもかってくらい、澄みきった青い空。頬に心地よい冷たい風があたる。  思いっきり走るとこんなに気持ちいいのか。焦る気持ちの端っこで、少しだけ高揚感を感じた。  徐々に、目的のゴミ置き場が見えてきた――と思いきや、ゴミ収集車がすでに来てしまっているではないか。ああ、もう走り出してしまう。  「ちょっと待ったあ!」  大声で呼び止めようとするが、間に合わずに車は走り出した。それでもと、私は追いかけ続ける、が、自分の足につまづいて転げてしまった。  もうこれは無理だと諦めかけたそのとき。  「大丈夫?怪我してない?」  そう言って私をのぞき込む人影。  「私は大丈夫です。でも……」  「あのゴミ収集車を引き留めればいいのかな?」  「え?」  その男の人は走り出した。それもかなりの速度で。  ……おお、めちゃくちゃ速いぞ。  しばらく待っているとゴミ収集車と男の人はすぐに戻ってきた。  おかげで私は、事情を説明して許可を得て、ゴミ袋の中から紙袋を1つ1つ探し始めることができた。男の人は親切に私を手伝ってくれた。  それから約1時間半後。  「あった!」  ゴミ収集車の人たちは無理に引き留めてしまったのにもかかわらずに、「おー、よかったねぇ」と言ってくれた。なんて気のいい人たちだろうと、心の底から感謝した。  そして私は、男の人のほうを勢いよく振り向き……。  「すみません、わざわざ走らせてしまった上に、ゴミまで漁らせてしまって。本当に、ありがとうございました!」  見知らぬ人にここまで助けてもらったことがあまりも申し訳なく、私は地面に頭をぶつけてしまいそうな勢いで男の人にお辞儀をした。 「ふっ……いいよいいよ、そんなに気にしないで。ゴミ収集車もすぐそこの信号で止まってくれたから、そんなに走ってないし。それに、目の前に困っている人がいたら、助けるのは当然のことだよ」  そう言って優しく微笑む彼。こちらが何度もお礼を言うのをしばらく聞くと、「それじゃあ」と彼は去っていった。
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