淡い期待を抱いて

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淡い期待を抱いて

 しまった、何かお詫びするの忘れた!あちゃーやらかしたなぁ……でも、連絡先も名前すらも知らないしなぁ。次に会えたら、ちゃんと恩返ししなきゃ。  それにしても、さっきの人どこかで見たことあるような……。どこだったかなぁ、つい最近だったような気がするんだけど。  ――って、そうだよ!この前の店員さんだよ!  信じられない、まさかあの人だとは。  「……これが少女マンガとかだったら運命なんだけどなー」  ボソッと呟いてみる。いざ口に出してみると、なんてバカバカしい言葉だろうと、思わず乾いた笑いが零れてしまう。まあ、そんな都合のいいことなんてあるわけないけど。  空が群青から淡い紫、白みがかった青、そしてほのかな茜色へと変化し染まっていく。  バカげた考えだとわかっていても、ちょっと胸が弾んできて、なんだかくすぐったい。  ほんの少しだけだったけど、  ――どこか期待をしている自分がいた。
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