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勇気をだして
学校からの帰り道、2週間前に母と買い物に来た日用品店に寄ってみる。もちろん、目的は例のあの人だ。
若干ストーカーっぽい感じだが、お礼をするにも彼について知っていることはこれくらいしかないので仕方がない。
お店の中をしばらく歩き回ると、奥の方で彼を見つけた。
――のはいいんだけど、どうやって話しかけよう。
急に声かけても怪しい人だと思われるし、大体、向こうは私のことなんか覚えてないだろうしなぁ……。
ヤバい、そこまで考えてなかった!
1人でおろおろとしていると、誰かに肩をポンッと叩かれた。
「……うわぁぁぁあああ!!!」
「おっと……こんにちは。急にごめんなさい。この間の子だよね?俺のこと覚えてるかな?」
「も、もちろんです!」
「よかったぁ」
ほっとしたような彼の笑顔に心臓の鼓動がうるさくなる。まったく、美佳がヘンなこと言ったからどうしても意識してしまうじゃないか。
「あ、あの私、きちんとお礼せずにすみませんでした!それに、あんなゴ、ゴミを……見苦しい姿を見せてしまいました」
「そんな、いいんだよ。俺が好きでやったことなんだし」
「それであの……もしよければなんですけど、この後お時間ありますか?ちゃんとお礼がしたいので」
ダメだったかな……変な子だと思われた?
心臓がドクンドクンと徐々に速くなる。手にじわりと汗が滲む。
ぎゅっと目をつぶり、彼からの返答を待つ。
「うん、いいよ。あと1時間ちょっとくらいしたら仕事上がれるからそれまで待ってもらうことになるけどいいかな?」
よかった、嫌がられてはいないっぽい。
「あ、はい。大丈夫です。待ち合わせ場所は駅前のカフェでいいですか?」
「うん、わかった。じゃあまたね」
そして彼は仕事へと戻っていった。
温かく優しい「またね」という3文字が、いつまでも耳に残って心地よかった。
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