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芽生えた感情の名前は
それから待つこと1時間半ちょっと。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「いえ、全然大丈夫です」
「あ、コーヒー1つください」
やっぱ仕事の時と雰囲気ちょっとか変わるなぁ……。
なんだか少しラフな感じだ。
「お仕事お疲れ様です」
「ありがとう」
なにか会話しなきゃ……と思ったけど、何話したらいいのかわからずに黙り込んでしまう。
「えっと……名前、聞いてもいいかな?」
「はい、霧島明日香です」
「明日香ちゃんね。俺は藤堂。藤堂誠って言います」
「とうどうさん……」
「明日香ちゃんは趣味とかあるの?」
「私、読書が好きで家に本をたくさん持っているんです」
「俺も本好きなんだ」
「そうなんですね!藤堂さんはどんな本を読むんですか?」
「いろいろ読むけど……ミステリーとかが1番好きかな。犯人誰だろうって自分でも考えてワクワクしながら読めるし」
「確かに、ミステリーって読むときドキドキしますよね」
「明日香ちゃんは?どんなの読むの?」
「私は……」
私たちは時間も忘れて話し続けた。藤堂さんと私は趣味が同じな上に音楽などの好みも同じで、話していてとても盛り上がった。
さすが大人というか、私の知らないいろんなことを知っていて、話を聞くのが面白かったし、私の話も熱心に楽しそうに聞いてくれて、藤堂さんと過ごす時間はとても心地よかった。
「あ、もうこんな時間になっちゃったね」
「本当ですね」
「そろそろ帰ろうか。もう暗いし、途中まで送っていくよ」
「そんな、悪いですよ」
「いいよいいよ。女の子なんだから危ないでしょ」
胸がドキッっとして、頬がポッっと熱くなる。
「じゃあ、ここは私が……」
「ううん、大丈夫。俺が払うよ」
「でもそしたら、私が藤堂さんにお礼をするって約束が……」
「年上の見栄みたいなものだから。それに、たくさんお喋りして楽しかったから。それがお礼ってことで。……じゃあ、端数は明日香ちゃんに払ってもらっていい?」
「はい、ありがとうございます」
生まれてから今まで、こんなに男の人に優しくしてもらったことがあるだろうか?いや、ない。いや、断じてないッ!!!
胸の鼓動が高まる。それと同時に、顔に熱が集まっていくのを感じる。
我ながら単純だとはわかっているけど、これはもう認めざるを得ない。
どうしよう私――藤堂さんのこと好きになっちゃったかも。
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