11人が本棚に入れています
本棚に追加
新しい気持ちを自覚して
「ここまでで大丈夫です」
「そう?今日はどうもありがとうね」
「はい。すごく楽しかったです。ありがとうございました」
もうこれでお別れなんだと思ったら悲しくなった。
「じゃあね」
「さようなら」
去っていく藤堂さんの背中を見送る。
これでもう会うことはないかもなぁ。そう考えたら、ふと胸が苦しくなった。視界がだんだん滲んでくる。
ああ。私、本気で藤堂さんのこと好きになっちゃったんだ。
行かないでって言えたらなぁ……無理だけど。
クルッと背を向けて私も歩き出す。すると、後ろから足音が聞こえてきた。
「ちょっと待って!」
振り返ると、こちらへと走ってくる藤堂さんの姿が見えた。
「ど、どうしましたか?」
「いや、あの……。明日香ちゃんさえよかったら、また一緒にお茶でもしてくれないかなって……」
「ぜひ、お願いします!」
「はぁー、よかったぁ。じゃあ、連絡先交換してもいい?」
「はい……!」
嬉しい、また会えるんだ。喜びのあまり私は泣きそうになった。
彼の声色だけじゃなく、街の灯りまでもが、私を優しく包み込んでくれているような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!