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恋は幸せなだけじゃないので
それから1ヶ月。私と藤堂さんは、週に3回、藤堂さんの仕事が早く終わる日に1時間ほどお茶をする関係になった。
藤堂さんと過ごす時間はあまりにも幸せで、楽しかった。
私にとってかけがえのない、大切なものだった。
そんな風に幸福な時間が積み重なるものだから、私の「藤堂さんが好き」という想いは、彼に会うたびに強くなっていった。
ある日、私はずっと聞けなかったことを彼に尋ねてみた。
「あの、藤堂さん。1つ聞いてもいいですか?」
「うん、何?」
「……と、藤堂さんって、か、彼女とかいるんですか?」
――少しの沈黙。あれ、もしかしているっぽい感じ……?すると、藤堂さんはふっと自嘲気味に笑って答えた。
「それがねぇ、いないんだよ」
「そ、そうなんですね……」
思わずほっとする。
ちらっと藤堂さんを見ると笑いがこらえきれないと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「なんでまだ笑ってるんですか」
「いや……なんでもない。ただちょっと……明日香ちゃんの赤面が可愛くてつい……」
不意打ちで「可愛い」と言われてさらに赤くなる。
か、可愛いって……そんなこと急に言われたら心臓もたない。
そんな風にしばらく照れていたけれど、いつまでも笑い続ける藤堂さんを見ていたら、つられて私も吹き出してしまった。
2人でお腹を抱えて笑う。
ああ、ずっとこうやって側にいられたら幸せだろうな。
だけど、そんな願いが叶うことはない。
こんなに素敵な人なのだから、きっと綺麗で大人っぽい女性が周りにたくさんいる。私なんかよりも、もっとお似合いの人が。
でもお願いします神様。
今だけは、この幸せを味わせてください。
口に含んだミルクの甘さとコーヒーの苦さが私を満たしていった――。
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