異国の地

3/4
前へ
/39ページ
次へ
「あいつ‼︎ どこへ行ったんだ‼︎」 ロウは家を飛び出すと、辺りをキョロキョロと見回した。 「明日香‼︎ あすかあっ‼︎」 名前を呼んだが、しんと静まり返っていて、返事はない。ロウはいったん家の中へと戻り、棚に置いてあったナイフを腰に差した。すると、棚の引き出しが開いており、いつも置いてある備品の一部が無くなっていることに気がついた。 「なんだ、何があった?」 誰かに連れ去られたとは考えにくい。この森はなかなかに鬱蒼としており、小さい頃から駆け回っていたロウやユノでさえ、道を見失うことがある。 「明日香、」 ロウは再度、家を飛び出した。学校へ行く自分たちを追いかけたのかもしれない。そう方角を決めると、ロウは森の中へと分け入っていった。 少し行くと、直ぐに森の様子がおかしいことに気がつく。 木にロープがくくりつけられている。見覚えのあるロープだ。 「あすかあ‼︎」 大声を張り上げるが、返事はない。ロープを辿って先へと進む。そのうちに、このロープがどこへ向かっているのかの見当がついた。 歩を進める。 途中で別れたユノは、もう自分の家へと着いているはずだ。いったん家へと帰ってから、本と食料を持ってロウの家へと来る予定になっている。 ロウは、甲斐甲斐しく明日香の世話をするユノを思い出していた。 「あいつ……実は世話好きだったんだな。それにユノは人の懐に入るのがうまい」 バナナや野菜を取りに行っている間に、明日香とかなり話を進めていたようで、戸惑ってしまって何も話せなかった自分との違いを感じた。 流暢になっていく明日香の喋り方に、ユノのクセなんかを見つけると、熱心に明日香の面倒を見るユノの姿が眼に浮かんできて、困った。 ロープを手で手繰っていく。 「……明日香を気に入ってる」 ロープを握る手に、知らず知らずのうちに、力が入っていた。 ✳︎✳︎✳︎ 「おい、何をしてる」 後ろで声がして、明日香は驚きのあまり、身体をビクッと波うたせた。 「え、あ、ロウか、びっくりしたあ」 腰に巻いたロープが、グイッと引っ張られた。 その拍子にしゃがみ込んでいた身体が後ろへと傾き、どしんと尻もちをついてしまった。 「いったたあ」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加