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ロウに部屋から出てくるなと言われたのを悲しく思っていると、ユノが来て慰めてくれた。
「もう怒ってないって」
「ううん、怒ってるよ。私、勝手なことしちゃったから。ロープも切れてたし……き、切れてたなんて……うっ、おバカすぎる」
ぞっと背筋が凍る。あの深い森の中でひとり迷子になったら。それは「死」を意味する。
あんな細いロープ一本だけで、これで大丈夫だと過信した自分が憎い。
「……ほんとバカだったよ。ロウが怒るの当然」
明日香が呟く。
「ねえ、ロウは心配したんだよ」
「ん、うん」
「ボクも同じ立場だったら、死ぬほど心配してた」
明日香はユノを見た。
この二人とは初めて出逢ってまだ間もないのに、こんなにも親切にしてもらい、そして情もかけてくれている。
明日香は不思議に思った。大切にされていることが、これ程にまで伝わってくるなんて、と。
「もう無茶なことはしないでね」
ユノが、その髪と同じ色の茶色味がかった瞳をじっと向けてくる。気恥ずかしい。
「うん、ごめんね」
「謝らないでいいよ。それで、明日香、訊きたいことがあるんだ。あのさ、コタローって一体誰なの? 明日香のなんなの?」
少しだけ強いユノの口調に怯みつつ、それでも慎重に答えた。事の顛末を説明している間、ユノは真剣な表情で、話を聞いてくれた。
(ユノもロウも、耳とか尻尾とか、私とはちょっと違うけど、いい人なんだな)
「あああ全部思い出したわー。私まじでバカだあ。バカなことしたあ」
毛布から顔だけ出すと亀のように丸まる。
落ち着いてくると、ため息が出た。
「はああ、ロウにももう一度ちゃんと謝らないと」
そして、もう一度、はあと息を吐いた。
✳︎✳︎✳︎
「明日香はね、そのコタローってのを探しにいきたいっていうわけ」
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