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見つけたのはユノだしオレには関係ない、放っておけばいいんだ、そう思い込もうとするが、思い切れない。
(でももし、生きていたら……いや、万に一つにもそんなことがあるはずがないんだけどな)
その確信はロウが過去、獣人の国内で発見した「人」という「人」は全て、絶命していたことに起因する。
それなのに、なぜなのか。
(国交断絶というのなら、どうして昔、人と獣は交われたのだ?)
「獣人」の起源。
ロウやユノが通っている学校で習う『獣人類の歴史』によれば、始祖ハンダルはすでに獣人なのだ。
ロウは、つとその場で立ち止まった。
自分の両の手のひらを見る。その手で頬を撫でた。
(どう見ても、これ、人に近いだろ)
『人人類』の国に住まう人間との違い。
ロウには人と違って、長く立派な尻尾がある。黒く硬い毛で覆われており、ムチのようにしなやかで、自分の意志で操作もできる。時々イタズラ心から、ユノの足に引っ掛けて、転ばせたりしていた。
そして、そのユノには獣の耳が。ロウの歴史の教師であるシモン大師の両手には、鋭いかぎ爪が。
ただ、それだけの違いで、あとは人間となんら変わりはない。
(それなのになんだろうな、この植え付けられたような劣等感は)
「でも……」
それでも。
お互いが分たれているのに、どうして昔、人と獣は交われたのだ?
ユノに『生きた人間を見た』と聞いて、その疑問に火が灯った。
立ち止まっていた足をようやく進めると、ロウは森の奥深くへと踏み入っていった。
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