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獣人の証
「ユノ、おまえがみつけたんだろ」
「そうだけど、拾ってきたのはロウだろ。キミが育てるべきだ」
「育てるって何だよ……ってか、引き取ってもらわねえと、こっちが困るんだよ」
同じクラスの生徒が、足を止めて遠巻きに二人を見ている。まさかのまさか『人』の話題で言い争っているなんて知れたら、大ごとになってしまう。
二人は声を潜めた。
「困るって分かってんだったら、最初から拾わなければ良かったのに」
ユノが、ケモ耳をピクピクと動かしながら、髪を指でぐしゃっとかき混ぜる。ユノが怒るか困るかした時の、癖の一つだ。
ロウがちっと舌打ちしながら、神妙な面持ちで顔を近づける。
「……すげえ、食うんだ」
「……は?」
ロウの声が小さ過ぎて聞き取れず、ユノが訊き直す。
歴史の教科書を机の上へと乱暴に置きながら、ロウは声を荒げた。
「あいつ、やたら食うんだよ。昨日の夜なんて、オレの分のメシまで食っちまって……二人前だぞ!」
「ちょ! しぃっ!! ってかそうなの?」
ロウが周りを遠巻きに囲んでいた輩を手で散らしてから、今度は声を抑えて言う。
「「人」って、あんな食うもんなのか?」
「知らないよ、そんなこと」
「教科書に書いてあったか?」
「あるわけないじゃん、ボクたちは共存できないんだぞ」
そのユノの言葉を聞いたロウが乱暴にイスを引き、どかっと腰を下ろす。そして腕組みをすると、はあっとため息を吐いた。
「帰りに図書室に寄る。こうなったら、調べるしかねえ」
ユノは、やれやれといった顔をすると、「『人人類の飼い方』なんて本があったら、お目にかかりたい」
「……おまえなあ、他人ごとみたいに言うなよ……」
その時、教室のドアが開いたので、そのまま口を結ぶ。席に座れよと言いながら、数学の教師が入ってきた。
(バーカ)
隣のユノがふっと吹き出すのが、癪に触った。
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