もう泣かないと、あの時俺は思った

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 その夜、保は自室で頭を抱えていた。もちろん試合はそのまま中断。ざわつく空気の中、相手校の顧問の指示によって、保たちは片づけを済ませて帰宅した。  自室のベッドに仰向けに横たわり、保はあの時の完璧なトスを再現する。 ――俺がスパイカーになりたいって願ったから? ――いや、願うことは自由だろ? ――なら、健介は何であんなことに……?  枕元に無造作に置いたケータイを確認してみる。だが、安田先生はおろかチームメイトの誰からの連絡もなかった。 ――キャプテンの俺に連絡がないってことは、健介はまさか……?  ぶるぶると保は頭を左右に振った。確かに自分がスパイカーだったらと願った。だが、健介に何かあって……いなくなってほしいとまでは俺は思っていない。 ――お願いだから、健介の命だけは助けてください。  神様か仏様か、お地蔵様かご先祖様か。そのうちの誰かひとりだけでも、いやみんなが俺の願いを聞いてくれたら……。  そう思った時には、保は眠りについていた。
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