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ホラーゲーム
「なぁ桐生、女連れて遊び行かねぇか?」
「なんだよ急に」
「だって夏休みもうすぐ終わっちまうんだぜ? 想い出作りてぇだろ」
内藤龍一郎(ないとうりゅういちろう)が唐突に出してきた提案。
この夏休みはさんざ遊び尽くしたというのに、まだ足りないのか。
「俺はともかく、お前女とヤッたりしてねぇだろ」
「それこそ余計なお世話だ」
「なんだよ、鈴音ちゃんといい感じなんだろ?」
このクソ暑いのに、肩に手を回して聞いてくるな。
うだる様な暑さに、そんな一言も出せず息を吐く。
「鈴音とはそんなんじゃない」
「じゃあ誰だよ? お嬢か? 衣笠か?」
「お前なぁ……」
少なくとも、カンカン照りのコンビニ前でする話じゃないだろう。
俺は逃げるように歩き出す。
「なぁなぁ。お前誰がいいんだよ?」
「しつっけぇなぁ……もう家帰れよ」
家に向かう途中もしつこく聞いてくる龍一郎。
「いいか、羽田桐生(はたきりお)君」
「フルネームで呼ぶな」
「今この時間、高校最後の夏という季節が来年も来ると思うなよ?」
もっともらしく言っているが、具体的にどこが違うんだと聞いてやりたい。
どうせまともな返答はないだろうが。
「なにも遠出しようってんじゃねえんだ」
「どこに行きたいんだよ?」
「ちょっとした冒険だよ」
ワルガキのように笑ってみせた。
高台にある大きな廃屋。
昔は公民館として利用されてきたが、老朽化が進み。
既に新しく市民センターが造られたので、放置されている。
壊すのにもお金がかかるから、今でもそのまま残っている建物。
子供の頃は、みんなで遊び場にしていた。
「俺達ももうすぐ大人に仲間入りするんだし、どうだ?」
想像の3倍はしっかり意味のある提案で、少しばかり驚いた。
全く乗り気じゃなかったのに、そう言われると行ってみてもいいかもなと思ってしまうほどに。
だから俺は、あっさりと許諾してしまった。
それが、惨劇の始まりとも知らずにーー
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