Doppel~ふたつの私~

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* 結局、父は(けい)によって警察に(こう)(そく)され、裁判にかけられて有罪判決を受けた。父が刑務所を出られるのは何年も先――そして私はマスコミや()(けん)(こう)()の目を()け、遠縁の田舎に引っ越してきたのだった。 「(いま)(さら)すぎるわよ、(けい)」 私は目の前に立つ(けい)を見つめる。 父は(あやま)ちを(おか)した。ふれてはならぬ神の領域に両手をさしいれた。 それでも私にとって父は父だ。だから(けい)のとった行動を理解できても、(ゆる)すのはきっと、とても(むずか)しい。 「手を(はな)して」私は思い切り(うで)を引く。「(けい)と話すことなんて、もうなにもない」 「俺にはある」しかし(けい)(がん)として(てのひら)にこめた力を(ゆる)めなかった。「(たの)む。どうか逃げないで聞いてくれ」 いやだ、聞きたくない、と私は首を()った。だって、いつかこんなふうにもう一度、(けい)に会うのが(こわ)かった。会って、自分の本当の気持ちに向き合うのが。 だけど今、腹の底から、ほとばしるように切実な想いが()き上がってくる。 ――あなたが、好き。
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