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啓と出会ったのは、二十四の終わりだった。そのころ私は、医薬品を扱う本社から車で一時間ほどの研究所に勤務していた。
臨床実験やデータ解析をしたり、たまに国際会議に出席するため、海外を飛び回ったり。私はいわゆる出世組だったのだけれど、それは父が細胞遺伝子学の権威、俊一・オズボーン・緒方博士だったからに他ならない。
そう、啓が現れたあの朝に、私はアスカが死ぬ夢を初めて見たんだ。混乱しながら職場にたどりつき、遅刻寸前で席についてなお、死の光景が目裏から離れなくて。
(あれは……あの夢はなに?)
ただの夢と片づけるには生々しすぎる記憶がまだ、肌に残っていた。自分が撃たれた衝撃、あの感覚が他人のものだなんて到底思えない。でも、なぜ。
――だってあれは、あなた自身の過去だもの。
すると突然、夢の中の声が応えるように頭の中で反響したので、私は凍りついた。
(あなた、誰?!)
この現象は何??
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