Doppel~ふたつの私~

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 * それからも(けい)は、(ひん)(ぱん)に私に(から)んできた。同じ部署、所属で、四六始終(しろくしじゆう)顔をつきあわせていては親しくならない理由もなく……やがて残業帰りに食事するようになり、週末に(こう)(らく)()にでかけたり、(ひん)(ぱん)(たが)いのマンションを行き来するようになって。 気づけば(けい)は、まるで最初からそこにいたように私と(どう)(せい)していた。 愛していた。(ほお)をかたむけて遠くを見る()(ぐさ)も、()(ちよう)(めん)でまじめな性格も。本や資料を読むときに(とき)(おり)眉をしかめるくせや、スーツを着ている姿からは想像できないくらい、()()な肉のない(きた)えられた(たい)()も。 (けい)は料理がうまかった。特に肉じゃがとほうれん草のごま()えと、ひじきの煮物は絶品だった。(うす)(あじ)でだしの風味が()いていて。 男の手料理の(とりこ)になるなんて、と思ったけれど、私は(けい)の作ったものなら大概なんでもおいしく食べられた。 あとから思えば、それも当然だったのかもしれない。(けい)は私を知りつくしていたんだから。 「いつか、あすかを月につれていく。地球育ちの君に、月から見える母星を見せてやりたいから」 青白い月明かりの中で()()いながら(むつ)(ごと)(つぶや)いた時、(けい)はなにを考えていたんだろう。 それからほどなくプロポーズされ、私は幸せに浸りながら(けい)を実家に連れていった。父も喜んで迎え入れてくれた。そのあと、あんなことになるとも知らずに――。
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