追慕の詩  『二十年の月日を越えて。』

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    🌱 二 日 後。🌱     伯母さん達に見送られながら   船に乗り込む三人。  誰もが、屈託のない     笑顔だった。   別れ際に   伯母さんは、マリに…。     『哀しみの全てを、この海に   流して行きなさいね。 向こうに帰って、全てが   片付いたら… 迷わずに此処に…   帰って来なさいね…」 その目は、大切な娘を  見つめるまなざしだった。     船の上から手を振るマリ…。   朝の日差しに    笑顔は輝いていた…。  来月…嫁ぐ遥よりも…。       あの日…   翼達を乗せた船が  白い波を引いて   大阪に向ったように…   汽笛を鳴らして   船は進みだした…。   あの日…   翼は哀しみ行きだった…   今…   マリは、微笑み行きの船     風に包まれる三人には…   微笑みが溢れていた。     『お母さん…遥にも…   田舎が出来るんだね…   ✨今治✨…     良い響きだね…。』     離婚したら…   伯母さんの家に…   翼の部屋に   住ませて欲しい…と  頼み込んだマリ…   翼のぬくもりの残る家で   これからの人生を  生きて行きたい…と。     伯母さんは反対した…   まだ若いのだから… 好い人を探して   やり直しなさい…と。   此処を田舎だと思い…   遊びにくれば良い…と。     翼も…  それを望んで居るからと。     マリは頼み込んだ…。 『もう…結婚は充分です… この二十年間…   それで充分です…   結婚したからと言って   幸せとは言えません。   私の為の人生を   生きて行きたいんです。   翼のそばで  暮らさせて下さい…。』と。     遥も、頼み込んだ…  月美も涙声で頼んでくれた     真奈美も健二も    頼んでくれた…     『翼は幸せすぎるよ…。』   涙を流しながら…   伯母さんは  マリを抱き締めた…。          
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