あの時のこと、覚えてる?

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その日の夜、私は自分の部屋のベットの上で、落ち込んでいた。 きっと友美は怒っているに違いない。 それにしても友美はとても不気味だった。 いつもの友美ではない気がする。 怖かったが私はメールで友美に謝ることにした。 自分{友美、ごめんね。ついカッとなっちゃったの。新しくできたおしゃれなカフェなのに台無しにしてしまってごめんね。予定空いたらまた行こう! しばらくして既読という文字が付き、友美からの返信がきた。 友美{いいよ。ゆるしてあげる。それにしても急に出ていくなんてひどいよぉー 友美のメッセージをみて安心した。 本気で怒ってはいなさそうだ。 自分{ありがとー。早速だけどさー来週の土…… その後色々とやり取りをした。 時計を見るともう11時を過ぎていた。 私は友美とクラスグループに「おやすみー」とメッセージを送った。 続々と「おやすみー」というメッセージが増えてくる。 中には夜中までやり取りしている人もいるみたいで、気になったので眠たかったが私はみんなのやり取りの様子を眺めることにした。 悠太{😊 健{どした 悠太{暇だなーって思って 咲{もうみんな寝る時間かー 悠太、健、咲の3人が主に話していた。 愚痴ったり、ふざけていたり、3人のやり取りを見ていてとても面白くて楽しかった。 気づいたら12時を過ぎていて、さすがに寝ないとまずいなと思い、スマホをマナーモードにしようとした、そのとき 咲{ねぇ、新しくできたあのカフェの噂、知ってる? 私はそのメッセージに目を引かれた。 あのカフェは私が今日友美と行ったところだ。 悠太{怖い系、やめてよぉ 咲は悠太のメッセージを気にかけずに 咲{あのカフェができる前にあった建物知ってる? 新しくできたカフェは私の家のすぐ近くだ。 カフェができる前になにがあったのか気にかけたことがなかった。 なんか、、、あったっけ、、、かなー?と、、、思いながらスマホの画面を見つめる。 咲{前に建ててあった建物はねカフェなんだよ。 ………。 健{どゆこと 咲{だから、あの新しいカフェができる前に、もうひとつカフェがあったの。 でも今より地味でまさしく大人っていう感じのカフェだったみたい。だから若い子には人気なかったんだって 健{じゃあ繁盛させるためのリニューアル的な? 咲{まあそうでもあるのかな。でも、あるとき、車が突っ込んでくる事故があって、とてもひどかったみたい。死者も出ていて、大きな窓のある道路側の二人席に座っていた高校生が巻き込まれちゃったんだって… 健{ひぇ~。ちょうど俺たちと同じくらいの年じゃん 咲{これだけじゃないんだよ。リニューアルして、とてもおしゃれになったけど席の配置とかは変わっていないんだって。それでさ、あそこの席に座ると、気づいたら高校生の幽霊が目の前に座っているとかなんとか! 健{怖ぇーwww やり取りを見ていて、どう見ても2人はふざけているようにしか思えなかった。 私はなぜか焦りを感じていた。 確かに、私たちは今日大きな窓のある道路側の席に座った。 目の前に座っていたのは絶対に友美だ。 いつもの友美ではなかったが…。 でも単なる噂話なのだ。 そう、噂話。 噂話なんだから。 咲{あれ?悠太はもう寝ちゃったのかな? 健{怖くて耐えられなかったのかw 咲{あとさぁー。私最近はまってる曲があってー… 2人が話す内容を変えたので、今のことは軽く受け流すことにし… 健{それより俺さっきの話のことめっちゃ気になるんだけど。ほら、呪われるとか、ふとした瞬間に消えてるとか…そういう現象は起こんないの? た…。 咲{単なる噂だよ?でもね、さっきそういうの気になってスマホで調べてみたら、、、あ、載ってたんだけど死んじゃった人は袋田(ふくろだ)しずこっていう人で向かいに座っていた人は運よく助かったんだって。それでね、その席に座ったらどうなるのかというと… 健{……… ………。 咲{あの時のこと、覚えてる?ってしつこく聞いてくるんだって! 健{震えるわぁーw 私の背筋に悪寒が走った。 健{でもさー。あそこできてから1、2か月だろ?そんな情報が飛び交うなんて、そうとうそのカフェに恨み持ってんだな。他の人にも巻き込むなんて 咲{それにしても『あの時のこと、おぼえてる』ってw 健{あの時のこと、覚えてる? 咲{www 健{ねぇ、あの時のこと覚えてる? 私はスマホを投げ出して、毛布を被り目をつぶる。 ピコッ、ピコッ、という着信音が、静寂に包まれたこの部屋に鳴り響く。 見えていないのに、2人のメッセージが私の脳内に浮かび上がる。 咲{あの時のこと、覚えてる? 健{あの時のこと、覚えてる? 咲{あの時のこと、覚えてる? カフェにいたときの友美の声が聞こえる。 私は耳を塞ぐが、友美の声は耳から離れない。 健{あの時のこと、覚えてる? 咲{あの時のこと、覚えてる? 健{あの時のこと、覚えてる? 私は耐えられなくなり、急いでスマホの電源を切った。 切ると同時にスマホを投げ出して慌ただしくベットに潜り込み、叫んだ。 分かったしずこ。もう分かったからぁぁぁぁ×××××!! 運よく助かった人というのは、、、私だ。 しずことは親友であった。 同じくらいの頭脳、運動神経、顔、体型。 どこも似すぎていた私たちは互いを恨むなどしなかった。 同じ、、、なんだから。 じゃあなんで死ぬときは同じじゃないの? しずこはそう思いながら、私を恨んでいるはずだ。 全てが同じだったからこそ、楽しい時間を過ごせたのだ。 しかし、全てが同じだったからこそ、同じにしないといけないと思い、自分勝手にできないし、片方がなにかで独立すると、もう片方が、悔しい、憎らしいなどの感情を抱き、荒れるのだ。 人間関係って難しい。 だから、しずこが事故で死んだときは、内心ほっとした。 嬉しい、というか自分の中でなにかが吹っ切れたような気がしたのだ…。 静かだ…。 静かすぎる…。 この静けさが私の恐怖を倍増させた。 私はベットの中で震えるという動作しかできなかった。 が聞こえるまでは。 ピコッ 私は硬直した。 スマホの電源は、、、切っていた、、、はずだ。 決して動きたくないのに、なぜ動いてしまうんだ。 怖さより興味の方が大きいのだろうか。 ベットから降り、落ちていたスマホをゆっくりと拾い上げる。 やっぱり電源は切られていた。 では、、、なぜ? 電源ボタンを長押ししてスマホを起動させる。 やがてロック画面になってパスワードを入力し、ホーム画面になった。 私の使っているメールアプリ・ラクラクメール、略してラクメル。 私はラクメルを恐る恐る開く。 開くと、新しい友達、というところに、①という数字がついていた。 ラクメルは新しく友達を追加すると、一週間まではこの新しい友達というところに表示されるような仕組みになっている。 私はそこをタップする。 新しい友達、の中の一番古い友達が上に来ていて、一週間経った友達がどんどん上から無くなっていくような仕組みだ。 私はこのラクメルをけっこう活用していて、友達は気軽にたくさん追加していた。 私は下へ、、、下へとスクロールしていく。 ・カナ 3日前 ・斎藤 2日前 ・yuka 2日前 ・優美 1日前 ・ミカです! 1日前 ・ささきみよ 10時間前 ・N.I 8時間前  ・袋田しずこ タッタ、イマ  袋田しずこカラノメッセージ  メール始めたんだね。なんで教えてくれなかったの。  あぁ、それよりさぁ、あの時のこと、覚えてる?  
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