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キス
「…高いところ苦手?あいき」
見つめる先にはあの二人が、陽介がいる
「いや、別に…なんで?」
答えるときですら、視線をこっちに向けない
「さっきから何も喋らないから」
「…あの二人、仲いいんだなって思って」
「あそこ結構喋ってるの見るし、意外と両思いだったりしてねー」
「…そう、なのかな…」
落ち込むあいきの横顔は、嫌いだ
あいきが落ち込むのは、だいたい陽介のことだから
「ねぇあいき、降りたら告白すんの?」
「んー…やっぱ振られたとしてもさ、告白したいじゃん?困らせるかもしれないし、自己満足なだけかもしれないけど…」
伝えたいんだ、と笑うあいきは綺麗で
好きだなと再確認した
「…あいき、目の上ゴミついてる」
「まじ?どのへん?」
「あー…もうちょい下…いいや、俺取ってあげるから目瞑ってて」
「おー」
なんの疑いもなく目を閉じるあいきのまぶたを指で撫でた
「取れた?」
「もーちょい…」
キスをした
危なげに傾いて、ゆっくりと上に上がる観覧車の中で
あいきと俺がキスをする姿を見て、大地と陽介は傷ついているんだろう
あいきは好きでもない奴にキスをされて、きっと傷ついている
そんなあいきを見て俺が傷つくんだ
そんなことを考えながら
キスをした
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