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幸せな時間
【ついた】
飾り気のない一言のラインに胸が踊った
俺は玄関に走って行って、ドアを開けた
「久しぶりーって言っても学校では毎日会ってるけど」
「久しぶり…来てくれて嬉し…」
「そういうのいいから、早くヤラせてくんない?俺今めっちゃ気分いいんだよね」
「あ…ごめん、あがって」
「ん」
俺と宇野ちゃんの関係はもう1年近く続いてる
宇野ちゃんの好きな人の話を聞きながら、いつも抱かれている
俺以外に本音を言える相手がいないと言われれば、嬉しくなるし受け入れもする
2週間くらい足が遠のいていたから、切られたのかと心配していた
『もしもし?久しぶり』
画面に映し出された名前
電話の向こうから聞こえる声は俺を救い上げた
「服脱いで、そこに座って」
この声に命令されるのが好きだ
学校では絶対に見せない、捻くれた笑顔も
乱暴な言葉遣いと違って、優しく触れる手も
何もかも全てが好きだ
「…最近ヤッてないから中キツくなってんね。一回ゆっくりほぐそうか」
そのうち絶対に捨てられることは分かってる
性処理の道具でしかないことも全部分かってる
「…好きだ」
甘ったるい声で囁くその愛が、一つ残さず別の相手に向いていることも知っている
ただ、この瞬間だけは俺だけを視界に映している
誰のことを考えても、誰のことを話しても
抱かれているのは俺、視界に映るのも俺
それが心地よくて溺れていく
「俺も、愛してる」
今日もまた、幸せな時間に突き落としてくれる
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