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フラグはすでに折られてる②
「おっはよー圭くん!」
思考していると横断歩道を渡った先に美鶴がチャリで現れた。ショートボブのストレートの茶髪が太陽の下、健康的に光っている。
「おはよう美鶴」
途端に一花が「美鶴!あなたこっち方面から登校しないでしょ!」と指をさし、
双海は「朝から顔を合わせて少しでも圭くんの好感度あげようって魂胆が見え見えだよー!」とむくれ、
「そっくりそのまま君たちに返すよー!」と美鶴が言う。
3人揃うと騒がしいことこの上ない。
美鶴は隣のクラスにいるバレー部エース。ロードワーク中に足をくじいたところを助けて、それからよく顔を合わせるようになった。
と、思っていたのは昨日までのことで、どうやら彼女の方から圭を見かけると近づいてきていたらしい。
「圭きゅん、おはよーだよー」
路地からにゅるり、と出てきたのは志緒里。ひとつ下の高一。「圭先輩」は堅苦しいよ、と言ったら「圭きゅん先輩」になり、なぜか「先輩」が省略されて今に至る。三つ編みでメガネをかけている妹の友達で、以前絵を褒めたところから懐かれている。それは敬愛からだと思っていた。昨日までは。
5人目はさすがに来ないか、と思っていたら道端に黒塗りの車が止まり、スーツ姿の男性が開けたドアから唯月先輩が華麗に降り立った。
「ちぇっ、もう全員揃ってんのか」
「お嬢様、お言葉を丁寧に」
「はいはい、じゃあね、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
車が去るのも待たずに、圭に向かって歩いてくる長身の美少女。圭の1学年上の、同じ陸上部の唯月先輩だ。
これで5人目。
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