フラグはすでに折られてる③

1/1
前へ
/7ページ
次へ

フラグはすでに折られてる③

「うわー唯月(いつき)先輩、こっち完全にいつもの通学路と逆方向ですよね?」と一花(いちか)。 「引くわー圭くんに会いたいからってそこまでする?」と双海(ふたみ)が腕組みする。  さっきまで仲違いしてたのにこの2人は先輩の前に限ってタッグを組むのだ。2人とも声に出して言わないが才色兼備の先輩に気後れしてる分、1人で対抗するのは心もとないらしい。 「うるっさいな朝っぱらから。その言葉そっくりそのままお前たちに返すよ。大体美鶴(みつる)も反対方向じゃないか」  とばっちりを受けた美鶴がむくれる。  言葉づかいの悪さに反して、先輩は今朝も美しい。艶やかなポニーテール、日に焼けること間違いなしの陸上部でなぜか色白。その謎は学校の学生七不思議になっているとかいないとか。  ただ、俺が心に決めたのはこの人でもない。  昨日、この5人は俺に告白してきた。 シチュエーション、口調、態度は様々だったが「付き合ってほしい」というのは一緒。  今朝次々現れたのは、きっと迷っているであろう俺と少しでも会って好感度を上げたい!ということなんだろう。  だけど一晩考えて、俺の心は決まっていた。 皆の気持ちには答えられない。 答えがはっきりしてるなら、これ以上期待を持たせるのはやめなきゃ。  皆の方を向いて、息を吸い込む。 「ごめん!俺、皆とは付き合えない!」  騒いでいた皆が凍りつく。 「えっ」 「嘘」 「なんで」 「まさかの皆全滅ルートだなんてそんな」 「……!」  立ち尽くす5人。 「一花も双海も、美鶴も志緒里も、唯月先輩も…こんな俺の事を好きになってくれてありがとう」  一人一人の目を見て言う。 「皆のことは好きだ。でも友達として、なんだ」 想いを寄せてくれていたのに――心が痛む。それでも、振り切らなきゃ。 「ごめん、俺、行かなくちゃ。会いたい人がいるんだ」  俺は走り出した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加