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フラグはすでに折られてる③
「うわー唯月先輩、こっち完全にいつもの通学路と逆方向ですよね?」と一花。
「引くわー圭くんに会いたいからってそこまでする?」と双海が腕組みする。
さっきまで仲違いしてたのにこの2人は先輩の前に限ってタッグを組むのだ。2人とも声に出して言わないが才色兼備の先輩に気後れしてる分、1人で対抗するのは心もとないらしい。
「うるっさいな朝っぱらから。その言葉そっくりそのままお前たちに返すよ。大体美鶴も反対方向じゃないか」
とばっちりを受けた美鶴がむくれる。
言葉づかいの悪さに反して、先輩は今朝も美しい。艶やかなポニーテール、日に焼けること間違いなしの陸上部でなぜか色白。その謎は学校の学生七不思議になっているとかいないとか。
ただ、俺が心に決めたのはこの人でもない。
昨日、この5人は俺に告白してきた。
シチュエーション、口調、態度は様々だったが「付き合ってほしい」というのは一緒。
今朝次々現れたのは、きっと迷っているであろう俺と少しでも会って好感度を上げたい!ということなんだろう。
だけど一晩考えて、俺の心は決まっていた。
皆の気持ちには答えられない。
答えがはっきりしてるなら、これ以上期待を持たせるのはやめなきゃ。
皆の方を向いて、息を吸い込む。
「ごめん!俺、皆とは付き合えない!」
騒いでいた皆が凍りつく。
「えっ」
「嘘」
「なんで」
「まさかの皆全滅ルートだなんてそんな」
「……!」
立ち尽くす5人。
「一花も双海も、美鶴も志緒里も、唯月先輩も…こんな俺の事を好きになってくれてありがとう」
一人一人の目を見て言う。
「皆のことは好きだ。でも友達として、なんだ」
想いを寄せてくれていたのに――心が痛む。それでも、振り切らなきゃ。
「ごめん、俺、行かなくちゃ。会いたい人がいるんだ」
俺は走り出した。
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