11人が本棚に入れています
本棚に追加
フラグはすでに折られてる①
今日は運命の日だ。
家を出ると、さっそく1人目がぎこちなく声をかけてきた。
「おっはよ!圭、偶然だね!」
声の主は幼なじみの一花だ。隣の家に住んでいる黒髪の同級生。かわいいと周りから評判の女の子。
「ね、昨日の今日でなんだけど、一緒に行っていい?」
上目遣いでこちらを見上げてくる。クラスの男子が知ったら悔しがること必至だ。少し考えて返事をする。まぁ、一緒に登校するぐらいなら。
「いいけど」
いいけど、君の想いには答えられないんだ。
もう心は決めている。藤崎圭がそう言おうとした時にいつものあの角が迫ってきた。
角を曲がる。いつもならここで、彼女とぶつかる。
「わぁー遅れちゃううー!」
予想通り双海がいた。どすーん!と正面衝突して尻もちをつく…のが初めて会った時に圭がとったリアクションだった。そのあと教室で再会して季節外れの転校生だとわかった。それからちょくちょくぶつかってくる。そのたびに彼女のツインテールが揺れた。
今日は間一髪かわすことができた。
ちなみに予告のように角を曲がる直前で何かしら言ってくるので、避けるか受身をとるようにしているが、たまにぶつかってしまう。対応としては1番危険性が高いのにぶつかったほうが双海は嬉しそうで、怪我はないし不思議な子だな、と思っていたけど昨日の出来事で納得した。
「ちょっと双海!毎回言ってるけどわざとらしいよ!危ないしまだまだ遅刻する時間じゃないわよ!」
一花も同じことを思っていたらしい。
「いいじゃん!こっから偶然を装って一緒に登校するくらい!一花も同じこと考えて朝同じ時刻に家出てるんでしょ!」
「うっそれは……そうだけども」
二人は俺の後方で言い争いを始めた。
そう、2人とも俺と一緒に登校したいのだ。全て偶然だと思っていたのに、一花は俺が家を出るところを待っていたし、双海もいつも早々と角で待機していたという。さらにあわよくば抱きついてしまおう、と思っていたらしい。
どうしよう、もう結論を言うべきなんだろうか。先に言ってしまっていいんだろうか。この調子だと3人目と4人目と5人目が現れる。
最初のコメントを投稿しよう!