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ーー 4 ーー
実際のところ、それから少し大変だった。
電話したはいいが、こいつは今いる場所の住所を知らないのだ。伝えようにもわからない。ということでオレが部屋中を飛び回り、住所の書かれているものを探す羽目になったのだ。
幸い借金の督促状が大量にあったので住所はわかったが、今度は漢字が読めなくて伝えられない。漢字の形を伝えつつ、なんとか住所を教えられたのが通報から5分も経ってしまったころ。
しかも電話で『〇〇ですか?』と訊かれてもこいつは読めないからわからないのだ。オレが頷いて教えられたからいいものを、一人だったら本当にどうなっていたことか。
しかし、住所がわかってしまえばあとは速かった。すぐにパトカーが到着し、子どもは保護された。
その間、犯人たちが戻ってこなくて本当によかった。あのカップル、うまいこと逃げおおせてくれたらしい。パトカーが来てしまったので、犯人はもうこの周辺にはいないだろうが、家の中にはたくさんの証拠品がある。捕まるのも時間の問題だろう。
残るは受け子にされたあのカップルだが、まあそれもなんとかなるだろう。彼らが借りていたのは明らかに金利がおかしかった。そのあたりのことはオレはよく知らないが、あとは警察がうまくやってくれるはずだ。
あの子どもが母親と抱き付き合うのを見届けたとき、オレはやっと罪悪感から解放されたような気がした。
ちなみに、あの母親の記憶は能力で少し奪っている。今回のこと、すべての記憶を奪うとわけがわからなくなってしまうため、餌をついばむように記憶をチョコチョコ抜いておいた。
これであとは警察や子どもの話を聞いた時、いいように補完されてくれるに違いない。子どものためにお金渡しにきたがそのことを忘れて帰ってしまった、なんてこと普通ありえないのだから、あの人の中で勝手に記憶が作られていくことだろう。
元はオレが始めてしまったことなのでオレが尻ぬぐいをするのは当然なのだが、ちょっと働きすぎじゃないかってくらい飛び回った。明日から、いたずらをする回数を減らそうかね。
一回くらい。
…………ん?
パトカーに母子が乗せらせるとき、子どもが電線の上にいるオレを見つけた。
母親の腕を引っ張りオレを指さすが、母親はその子の頭を優しく撫でつけただけだった。
そういえば、母親の記憶は抜いたが子どもの記憶は忘れていた。すべて抜いてしまってもいいのだけれど、どうせすぐ忘れてしまうのだろう。
知らない人についていったかどうかは知らないが、いい大人ばかりじゃないってことは忘れてほしくない。というわけで、あの罠にかけられたことを含めた、トラウマになりそうなところを軽く頂戴して、あとは残しておいた。オレのことも、まあいい思い出になってくれるだろう。
これにて一件落着、と。
あー、疲れた。
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