文学とは何かについて こたえる

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文学とは何かについて こたえる

文学とは何か それは 世界の秘密を探るもの と、わたしはこたえる 数学者が数式を用いて見いだすように 物理学者が林檎や猫で見つけるように 言葉や文字を杖とし、山並みを辿り 狭間に見えないハンカチを落とす 天文学者が星に名前を付けるように 生物学者が虫に名前を付けるように まだ見えないものに名前をつける 地面を空の底と名付ける 文学という文字(もんじ)に縛られるなら わたしの思う児童文学は、 子どもに世界の秘密を仄めかさないといけない 純文学は、よほどフィルターの目が細かくないといけない (そして大人に世界の秘密を仄めかさないといけない) じゃあ 詩や絵画や音楽は もちろん、世界の秘密そのもの だってそこに世界があらわれているじゃない、とわたしは嘯く たぶんそういうものはふんだんにあって 食べること、眠ること、知ること 秘密を愛そうとする哲学 その心理学 わたしは夜に眠れない 夜の深みに溺れて、踠きながら文字をつく 思いついて、おさえきれずに、ごぼごぼと息を吐く わたしの教える世界の秘密 開かない宝箱はなく その裏もドット抜けしていない ああ、そのデジャヴ 猫が隠れているかもしれないし、死んでいるかもしれない それを決められるのは誰 今宵も 言葉という思考実験を用いて 世界の秘密を探る 驚き、どよめきたいのは、きっと同じこころざし
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