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わたしの嘘は年を取る
こどもじみたわたしの嘘は、やがて創意工夫を通り越し、いささか横柄になってパーソナルスペースに陣取る。
少し三白眼、いや、いつもわたしを睨みつけているからか。わたしがしゃがみこんでも視線を合わせたりしないから、その相貌ははっきりとは分からない。だけれど、わたしの嘘だし、整った顔に作り上げているはずだ。つんとした美少女が好きなわたしだ。
わたしの嘘は、なるべく他人には見せないようにしている。正直者に思われたいわけではないけれど、嘘を見せると、もっと見せて欲しいとせがまれるのが嫌だからだ。わたしの嘘は、わたしがいちばん愛でたい。
気の合いそうな子には、ちょっと見せてあげる。
「だいぶ、上手に育てたね」
それは褒め言葉だろうか。そう受け取ろう。
「あなたの嘘もなかなか気が利いているわ」
少年を育てている、その子にはそれがふさわしい褒め言葉だろう。
わたしの嘘は年を取る。
成長している、と言って。あなたは、デリカシーがない。
そうね、とわたしが言う。
嘘はちぇ、と舌打ちをする。
ずいぶん背も伸びた。わたしの美しい嘘。そろそろドレスも用意しなくては。とびきりエレガントなもの。アレキサンダー・マックイーンのがいいんだけれど、わたしに用意ができるかな。彼ならわたしの嘘にぴったりの素敵なカッティングのドレスを用意してくれたと思うんだけれど、今となっては叶わなくて残念だ。
わたしの嘘は、わたしのパーソナルスペースから出てゆくことはない。
でもいつか、その嘘をわたしにくださいと挨拶に来る人があるかもしれない。わたしはその人物をよく見極めないといけない。
わたしの大事なだいじな嘘だ。いいように扱われてしまうのはごめんだ。いつか、わたしが忘れてしまうのは、いい。それは、しかるべきところに嘘が旅立った証しだもの。ああ、わたしの手元から離れた、と思い出して少し涙することはあるかもしれない。
「また背が伸びた。それに、綺麗になった」
嘘の頭を撫でながらわたしは言う。
嘘つき。
わたしの嘘に影はない。あっけらかんとしていて、それがいい。
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