138人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※
スウェットよりも院内パジャマの方が身奇麗に見えるし、何より病気がちそうな彼にはそれがよく似合っていた。
彼の作品の根っからのファンである僕が、それらを生み出す張本人に強く惹かれたとしても、何ら不思議な事ではないと思う。
「さぁて、帰ろうか。 君、名前は?」
「えっ、あぁ……成也です。 楢橋、成也」
「せいや? 星の夜って書く?」
「いえ、成るに也です」
「そっかー、でもまぁ漢字はどうでもいいか。 俺は星夜で覚えとくね」
「えぇ……っ? 覚えてくれるならちゃんと覚え……」
「星夜はいつから俺の家に来るの?」
「えぇ……っ?」
「俺達は星と波なんだから、導きと引力に逆らっちゃいけない。 見ての通り俺は何も出来ないクズ人間なんだ。 いつ孤独死してもおかしくないから、早いとこ後見人を見付けておきたい」
「……あの、それってどういう……」
「死後は北に輝くカシオペア座に引き取ってもらうことになってるんだ。 楽しみ~!」
「………………」
点滴で元気になったからと言って、ふざけているようには見えなかった。
僕の学生手帳を見てふむふむと頷く彼の瞳は、謎だらけな思考と同等に無垢に煌めいていて、僕らを嘲笑っているらしい星達にも負けない爛々としたそれだった。
──そういうわけで、僕はその翌日から「藤川志」の後見人になったのである。
今思い返してみても、まだ学生である僕との同居にこぎ着けたゆーさんの行動力は、マイペースだからの一言では片付けられないものがあった。
ゴミ屋敷のようだったゆーさんの自宅は、大きな戸建て一軒家。
決まり事やルールがめいっぱいあった彼との生活は、僕にとっては驚きと時々の呆れ、そして尊敬の念に紛れた恋情を生むには充分だった。
「んぁっ……せ、せいやくん……っ」
「僕が居ながら徹夜させてしまってごめんね、ゆーさん」
「ん、んっ、んんぁぁぁ……っっ」
何度目か分からない蜜を弾けさせる、ゆーさんの分身。
汗にまみれた腰を抱いて、ぐちゅっと中を抉るようにして性器をねじ込めば、大きく背中をしならせて啼いた。
射精によって僕の性器に襞が絡みつく。
うねうねと蠢き、もぎ取らんばかりに僕のものを締め上げるゆーさんの内側は、思わず意識が飛んでしまいそうなほどに気持ちがいい。
「あっ……あっ、んんん……っ、深……っ」
「でもね、ゆーさん……ダメじゃないですか。 迂闊にこの家に他人を入れちゃ」
「それは……っ! 仕方ない、んだ……!」
「仕方ない……? 僕が帰ってこなかったら、ゆーさんあの人とこうなってたでしょう?」
「分からない……、あぁっ……それは分からないっ」
「……残酷な人だ。 僕に星と波を強いておきながら、裏切るつもりなんですか」
「あぁっ……せいやくん……っ、もっと! もっとくれ……!」
困った事に、ゆーさんは僕の話を聞かない。
この内壁を知るらしいかつての恋人は、彼の担当編集者だ。
別れた経緯など知りたくもないから聞かないけれど、いけ好かない。
学生の本分を全うしている僕の知らないところで、ゆーさんは平気で快楽を取るような人である。
体に聞いてみてもその形跡は無かったが、兎に角いけ好かない。
ムカついてムカついて、どうしようもない。
最初のコメントを投稿しよう!