26人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「ねぇ、覚えてたりするの? 眠っていた間のこと」
看護師さんが晴樹の血圧を測定するのが終わる否や、私は質問した。
「それがさ、眠っているって感じじゃないんだよな。なんていうか、意識はハッキリしないのに感覚がある……起きてるのに体は動かない、みたいな」
晴樹はその感覚をうまく言葉にできないみたいだ。それがもどかしいのか、怪我をしていることを忘れて頭を掻こうとする。
「包帯が巻いてあるからだめ!」
「あ、ごめん。でも頭掻くくらい大丈夫だろー……?」
私の気持ちなんて知らずに、晴樹はいつもの調子で笑う。
「大丈夫じゃない! だいたい私がどれだけ心配したか──」
最後まで伝える前に、目から涙が流れてしまった。晴樹の様子を看ていた看護師さんが、泣いている私を見て晴樹に注意をする。
「こら、彼女さん泣かせちゃダメじゃない」
「ちがっ香蓮は彼女じゃ……」
「彼女じゃなきゃなんなのよ。彼女、毎日お見舞いに来てたのよ。まぁ、これだけ話すことができたら大丈夫でしょ。私は先生に報告してくるから」
看護師さんはそう話すと、銀色のカートを引きながら病室を出ていった。
「……ごめん晴樹、なんか看護師さんに変な勘違いさせたみたい」
「いや、いいよ。俺、どれくらい寝てたんだ?」
「丸々一週間」
「マジかぁ……。心配かけてごめん」
「ううん、目を覚ましてくれて本当に良かった」
「ありがとうな。ところでさ、さっきの話しの続きだけど」
私の胸がドクン──と脈打つ。さっき感覚はあるって言ってたし、もしかしたらあのこともバレてるのかも知れない。
「お前さ、俺が寝てる時にキスしてなかった?」
晴樹のその言葉に、私は自分の胸の熱が耳まで広がっていくのがわかる。
「は、はあ⁉ してないわよ!」
「なーんか、唇にそんな感覚が残ってるんだよなぁ」
「晴樹、やっぱり起きてたでしょ⁉」
「ほら、してるんじゃん」
晴樹は意地悪そうな顔で私を見る。ああ、もうバカ! でもその意地悪そうな顔が、いつだって私の胸をときめかせる。
「それは晴樹がずっと眠ってたから……、ほら、白雪姫でもあったじゃない!」
「それならする方が逆だろ。今度は俺がしてやるからな」
「──え、それって……?」
最初のコメントを投稿しよう!