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ああ、私はたしかに彼女を知っている。けれど、一体誰だったのか。そして、何故私はこの花を植えようと思ったのだろう。
辺り一面に、秩序正しく並ぶ真っ白な花。この花の名前は、確か……。
──コスモス。宇宙の花。白い花なら、心の中で好きな時に好きな色に染められる。そう言ったじゃない。忘れちゃったの? エド……──
ああ、そうだ。
確かにそんなことを言ったような気がする。あれはいつのことだっただろうか。
埋もれた記憶をたどろうとした時だった。
視界が真っ白になる。すべてが白に飲み込まれていく。
そして……。
※
周囲を白い壁と天井に囲まれた建物の中に、私はいた。
正確には、その建物に設置された生命維持装置の中にいた。
生体保護のため容器に満たされていた液体の水位が下がるに連れ、ぼんやりとしていた意識は覚醒していく。
上半身を起こすと、そこでは褐色の肌とくせ毛の白髪を持つ男性が、人好きのする笑顔を浮かべていた。
彼の名は、ジャック。特務部隊を形成する我々『DOLLS』の開発を行った人物。
「エド、どうだい調子は? 」
言いながら彼は、様々な数値が映し出されたモニターを確認する。と、程なくしてその顔から笑みが消えた。
「……脳波に若干の乱れあり、か」
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