1270人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
今より少し前。
今日は早めに帰れたから、日子の好きな物でも作ってやるか、と思いながら、誠孝はキッチンに立っていた。
解約できるまでもうちょっとかかるので、日子の部屋はまだそのままなのだが。
最近ではほぼ、二人で誠孝の部屋で暮らしていた。
日子は子どものようなメニューが好きだ。
ハンバーグとかシチューとか。
今日は両方作ってやるか、と思う。
昼間、仕事で宿敵を上手くへこませてやったので、誠孝は機嫌がよかった。
……もちろん、その分、日子はへこんだままなのだが。
戦場で出会った強敵と互角に戦い、わずかな差で勝ったときの爽快感というか、やり遂げた感というか、
と誠孝はあの会議での戦いを思い出し、感慨に耽っていた。
「いやいやいやっ。
ってことは、私は絶望感と寂寥感にまみれてますよねえっ」
と日子は叫ぶだろうが。
誠孝は、日子の機嫌が美味しいものですぐ直ることも知っていた。
最初のコメントを投稿しよう!