日子たちのその後――

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 今日は人前式なので、みんなの前で婚姻届にサインして、指輪を交換して終わりだ。  誓いの言葉もなければ、キスもない。  まさか。  そういうのが嫌で、ここで人前式にしたのだろうか。  自分で式の流れが自由に決められるから。  でもまあ、そういうのも誠孝さんらしいか、と思い、 「もちろんですよ~」 と言いながら、日子はゴソゴソ会社で使っている印鑑の袋を出してきた。  中にシャチハタや普通の印鑑などが入っている。  袋ごと持ってくれば間違いないだろうと思い、職場の引き出しから持ってきたのだ。 「……あれ? 訂正印とシャチハタしかない。  そうだっ、この間、違うケースにっ。  シャチハタ駄目なんですよね?  訂正印でいいですかっ?」 と小さな訂正印を誠孝に向け、日子は言う。 「……なにを訂正する気だ。  この結婚をか」 と誠孝が言ったとき、後ろから母親が溜息をつきながら、肩を叩いてきた。
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