十七

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   あの場所にあんなものがあっただろうか。つい先程、その場所を通り過ぎたばかりの橘は、そんな疑問を抱きつつもその物体を注視する。  破片の形状から察するに、それは硝子か、若しくはプラスチック製の、瓶の形をした何かであるようだ。一見すればお酒などの飲み物を入れる瓶のように見えるが、高校の、しかも部室の床に積まれた書籍の中にそんなものが紛れるなど有り得ないだろう。 「……?」  正体の解らぬその物体に、橘は心中で首を傾ぐ。その思考を遮るように、彼女の左の方で先程と同様の破裂音が響いた。そちらへと視線を向けるよりも先に、今度は彼女の前方、そして直後に入り口の方向から、次々と破裂音が響く。 「な、何なの……!?」  混乱しつつ、彼女は再び周囲を見渡す。やはり破裂音のした方向には、何かの破片が散らばっていることが確認できる。  
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