十七

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   橘は頭を左右に揺らし、見るからに上機嫌な様子を見せながら、満身創痍な九条の耳許に顔を寄せ、囁く。 「どっちがいいかしら、九条君。カッターで滅多刺しにされて死ぬか、それとも、炎の中に投げ込まれて死ぬか」 「くっ……」  悪戯な笑みと共に提示されたその二つの選択肢に、九条は顔をしかめつつ、それでも猶、窓の方へとその身を滑らせる。橘はふぅ、と大きな溜め息を吐いた後、その口許をぐにゃりと歪めながら、カッターナイフを逆手に構えた。 「……!?」  唐突に響いた、パン、という破裂音に、橘は体ごと驚いて、カッターナイフを振り下ろそうとしていた手を止める。  何かに引火して爆発でも起こしたのだろうか。そんなことを考えながら、橘は素早く周囲を見渡す。すると後方の床に、何かの破片のような物が落ちているのが目に留まった。  
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