十七

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   伊勢の小柄な体格では九条の体重を十分に支え切れないのか、二人は何処か覚束ない足取りで、書籍の山を掻き分けながら進んで行く。 「……! 待ちなさい……!」  漸く事態の変化に気付いた橘が、咳込みながらもそう叫ぶ。そうして走り出そうとした橘だったが、足下の書籍に躓いてその場に膝を付いた。  次の瞬間、崩れた書籍の中から転がってきた瓶状の物体が彼女の眼前で破裂し、薬品らしき液体が飛散した。その直後、ひんやりとした空気が周囲に充満する。  九条らを追うことも忘れ、その一部始終を見守った橘は、ごくり、と生唾を飲み込みつつも、足下に転がる瓶の破片を掴む。そうしてゆっくりと拾い上げたそれを目の高さまで持ち上げ、そこに書かれた文字を読んだ彼女は、唐突に憤怒の形相を浮かべ、その破片を九条らの方に投げ付けた。  
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