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25話
「じゃあ、ちょっと行ってきます。」
「急がなくていいからな。」
俺の家に向かう前に、1度由香の家に寄ることにした。
着替えたいだろうし、間違いなく泊まることになるから、その準備をさせるためだ。
10分程して、小さな鞄を持った由香が戻って来た。
急がなくていいと言ったのに、予想よりもかなり早い。
再び由香を助手席に乗せて、自分の家へと車を走らせた。
「どうぞ。」
「お邪魔します…」
来ると分かっていたらもうちょっと片付けていたんだが、今朝バタバタしていた名残がそのままだ。
「ちょっと片付けるから、ソファーでも座ってろ。」
「はい…」
由香がソファーに行くのを見送って、朝置き去りにされた食器を急いで片付ける。
片付けながら由香を見ると、やっぱり緊張しているんだろう。
ソファーの端っこに微動だにせずに座っている。
本当に大丈夫なのか…?
「…由香。」
「はいっ。」
「何か飲むか?珈琲かお茶ぐらいしかないが」
「あ…じゃあ、珈琲で…」
「分かった。ちょっと待ってろ。」
飲み物で少しはリラックス出来ればいいが…
まあ本当に無理そうなら、俺が止めてやればいい。
無理させてまで抱きたいわけじゃない。
「お待たせ。」
「ありがとうございます…」
2人分のカップを持って、由香の隣に腰を下ろした。
ビクついたりはしてないが、緊張は強いようだ。
「…結城さんのお家、広いですね。」
「そうか?よくある1LDKだと思うが。」
「家よりは広いです。それに、想像よりも綺麗です。」
「どんな想像してたんだよ。」
「ん~…弟の1人暮らしの部屋にたまに行くんですけど、もっとこう…ごちゃごちゃしてるというか。私の中の基準が全部弟なので…」
「なるほどな。」
それっきり由香が黙ってしまって、無言の時間が続く。
…ちょっと空気を変えた方がいいな。
「…何か映画でも見るか?」
「え?」
予想外の提案だったのか、由香がきょとんとこっちを見た。
「由香が見たい物選んでいいぞ。」
「えっと…あの…?」
困惑している由香の頭を撫でてやる。
「まだ夕方だし、時間はこの後たっぷりあるだろ。…まずは由香とのんびりしながらイチャイチャしたい。」
「…ふふっ!イチャイチャなんて言葉が、結城さんの口から出て来るとは思いませんでした。」
「初めて使ったからな。」
いつものように笑っている由香を見て、少し安心する。
「…由香がしてもいいって思ってくれただけで俺は嬉しい。映画見たり、食事したり…2人でのんびりしてからでも十分時間はあるから。」
頷いた由香の表情から、少し緊張が取れているような気がした。
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