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晩飯にピザを頼むことにした俺達は、どうせなら映画を見ながら食べようということになり、先に風呂に入ることにした。
先に入ってしまっていた方が、いざその雰囲気になった時、由香も余計な事を気にしなくていいだろうという狙いもある。
順番で後から入った俺が風呂から出たら、由香がスッピンを見せたくないあまりにずっと俺に背中を向けていた。
「由香、こっち向けよ。」
ぶんぶんと音がしそうな程に首を振る姿に苦笑する。
遅かれ早かれいつかは見られると思うんだが。
「…仕方がないな。それなら…こうだ。」
背中を向けられているのをいいことに、脇腹を思いっきり擽ってやる。
由香が擽ったがりというのは何となく予想していたが、どうやら当たっていたようだ。
「ひゃああっ…やっ…結城さんっ…あはは!…やめっ…!」
少し暴れながらこっちを向いた由香は、少し涙目で息が荒くなっている。
それが俺を妙に刺激してきて、少しだけ後悔した。
「はぁはぁ…結城さん、酷い。」
「由香がこっち向かないのが悪い。…スッピンも可愛いな。」
「もう…」
ちょっと拗ねている由香に触れるだけのキスをすると、ちょっと物足りなさそうな表情で見られて、思わず息を飲んだ。
「由香…?」
「…あの」
由香が何か言おうとした時、急にインターホンが鳴って、2人同時に肩を震わせる。
「…ピザ来たみたいだな。」
「…ですね。」
「受け取ってくるから、ちょっと待ってろ。」
廊下を歩きながら、さっきの由香の様子を思い出して鼓動が早くなった。
…俺の方が緊張してるとか、情けねえな。
ピザが届いたことで空気が変わり、予定通り映画を見ながら食べ始める。
今は由香も映画に集中しているようだ。
「…っくしゅん!」
映画が後半に入った所で、由香のクシャミが聞こえて目を向ける。
最近夜は気温が低くなってきているから、冷えたのかもしれない。
「寒いか?」
「少しだけ。」
「…ここ来るか?少しは温かいと思うぞ。」
ラグに直接座っていた俺が足の間を示すと、少し間を置いてソファーから由香が移動してきた。
目の前の由香のお腹に、腕を回して抱きしめてやる。
「少しは温かいか?」
恥ずかしいのか、言葉ではなく首を何度も縦に振って答えている。
チラチラ見える耳が真っ赤だ。
…この体勢結構まずいな。
いつもより、由香の匂いとか柔らかさがダイレクトに伝わってくる気がする。
「なあ、由香…」
「んっ…」
普通に話しかけただけだったが、由香の口から吐息が漏れた。
…今の、多分耳で反応してたな。
あんな声聞いたら、本格的にまずい。
まずいのは分かってるが…
「耳も弱いのか?」
「ん…結城さん、そこで喋らないで…」
「…こっち向け、由香。」
ゆっくり振り向いた由香に、俺の状況を知らせるように、最初から深いキスをする。
「んぅっ…はぁっ…」
「…由香、怖いなら今すぐ止めろ。今ならまだ止まれる。」
「…止まらなくて、いいです。」
はっきりとそう言った由香は、緊張していないわけではなさそうだが、恐怖心はあまり見えない。
「…分かった。じゃあ、ベッド行くか。」
頷いた由香の手を引いて寝室へ向かいながら、俺の緊張がピークに近づいていた。
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