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「気を付けて帰って下さいね。」
「ありがとうございます。また来ます。」
夕方、予想以上に和やかに迎えられた由香の実家を出て、朝と同じように3人で車に乗り込む。
考えていた挨拶の半分も言わずに、俺と由香の結婚はあっさりと認められた。
というか、初めから認められていた。
最初の質問が、結婚式はどうするの?だったからな。
…いや、それよりも。
「慎也さん…そんなにショック受けないでください。」
「いや、ショックだったわけじゃない。…ちょっと複雑な気持ちになってるだけだ。」
ここに到着して由香の家族と顔を合わせた後、妹が開口一番に言ったのが”想像してたよりイケおじ!”だった。
イケおじ…つまり、イケてるおじさんだと言われたわけだ。
自分の義妹になる相手に。
すかさずお義母さんに窘められていたが。
「最後にはかっこいいお兄ちゃんが出来て嬉しいって言われてたじゃないですか。それに、私は勿論ですけど、誠也もおじさんだとは思って無いと思いますよ。ね?」
この話題に関わる気が無かったのか、突然話を振られた弟は姉を恨めし気に見た後何度か頷いていた。
確かに帰る間際、”どんなおじさんが来るんだろうと思ってたけど、かっこいいお兄ちゃんが出来て嬉しい”と彼女は言ってくれた。
そもそも、女子高生から見たら俺の年齢は立派なおじさんだと理解はしている。
ただ、自分の義妹になる相手に言われたというのが、俺を複雑な気分にさせていた。
いくら”イケてる”とか”かっこいい”と形容されても、何だろうな…この喜ぶに喜べない感じは。
多分、見知らぬ女子高生におじさん呼ばわりされても、ここまで複雑な気持ちにはならなかったんじゃないかと思うが。
…後で由香にたっぷり慰めてもらうとするかな。
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