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『ね、どう?』
人の気も知らず、可愛らしく、にこりと笑ってこちらを向くから、不意に距離が縮まってドキリとする。
柔らかく長い髪がなびいて、シャンプーの匂いがふわりと香る。
流れてくる曲を聞いて、ああ…琴美のソプラノの高音が映えるだろうな…と、思ってしまう。
こうなると、結果的に視覚・嗅覚・聴覚が奪われて、衝動へと繋がるわけで…。
更に、ラフなワンピース姿だし、無防備な格好で、無邪気に触れてくる琴美に、まじでやめて…って思いながら、自分自身にブレーキをかける。
分かってんのかなー、この子…。
俺だって男なんですけど?
この振り回されてる感にちょっとムカついて、間近で何も言わずに見つめ返してやれば、一瞬、見開いた目が俺を映して、頬を赤らめた後、そうっと気まずそうに逸らされた。
なにその反応?どこまでも可愛いよ…。
多分、今、「つき合わない?」と言えば、つき合えるくらいには想い合っていると思う。
だけど、一時的な楽しみだとか、刹那的な感情だとか、そんなものはいらなくて。
もっと…、半永久的な、確実なものが欲しいと思ってしまっている。
「ねぇ、琴美…」
『………何?』
「………や、いいんじゃない?楽譜探しといて」
わかりやすくビクリとされると、手を出すどころか、何も言えなくなる。
わかってるよ。この関係を崩すってことは……、でしょ?
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