メランコリックな両想い

2/3
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
『ね、どう?』 人の気も知らず、可愛らしく、にこりと笑ってこちらを向くから、不意に距離が縮まってドキリとする。 柔らかく長い髪がなびいて、シャンプーの匂いがふわりと香る。 流れてくる曲を聞いて、ああ…琴美のソプラノの高音が映えるだろうな…と、思ってしまう。 こうなると、結果的に視覚・嗅覚・聴覚が奪われて、衝動へと繋がるわけで…。 更に、ラフなワンピース姿だし、無防備な格好で、無邪気に触れてくる琴美に、まじでやめて…って思いながら、自分自身にブレーキをかける。 分かってんのかなー、この子…。 俺だって男なんですけど? この振り回されてる感にちょっとムカついて、間近で何も言わずに見つめ返してやれば、一瞬、見開いた目が俺を映して、頬を赤らめた後、そうっと気まずそうに逸らされた。 なにその反応?どこまでも可愛いよ…。 多分、今、「つき合わない?」と言えば、つき合えるくらいには想い合っていると思う。 だけど、一時的な楽しみだとか、刹那的な感情だとか、そんなものはいらなくて。 もっと…、半永久的な、確実なものが欲しいと思ってしまっている。 「ねぇ、琴美…」 『………何?』 「………や、いいんじゃない?楽譜探しといて」 わかりやすくビクリとされると、手を出すどころか、何も言えなくなる。 わかってるよ。この関係を崩すってことは……、でしょ?
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!