1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー、やばい。
結構飲んじゃった」
「ワインも開けようとか言うからだろ?」
「ふふ、でもおいしかったね」
あれから二人で飲み進めて
気づけばもう二時。
それに気付いているのか、いないのか
俺の様子を窺うように仕掛けてくる。
「……明日、大丈夫かな」
「なにが?」
でもその仕掛けには簡単に乗ってやんない。
そんな俺に、さっきまでソファ下にいたはずの萌衣が
いつの間にか隣に来てて、
「……今何時?」
近付く熱い体温に
心拍数がどんどん上がってくのがわかる。
そんな目で見んなよ。
萌衣との永遠なんてないのに、錯覚しそうになる。
「もう終電なんてねぇよ?」
トンっ……、て肩を押すといとも簡単に倒れ込んだ。
その上に覆い被さるように乗っかれば
潤んだ瞳で誘ってくる。
「なんかすげぇいい匂いすんだけど」
「え……?香水かな?」
「へー、これってなんの匂い?」
いつもの萌衣の香りじゃない
甘くて甘くて、脳がおかしくなりそうだ。
「なん…だったかな?忘れた……。」
さっきと同じ、誤魔化すようなその言葉。
それが気に食わなくて
首元に寄せてた唇で、その無防備な肌を甘噛みする。
「……っ、」
「あいつ好みの香水?」
「………、」
「嘘でもいいから違う、って言えよ……」
俺の腕に触れてる萌衣の手。
首元から顔を上げれば
泣きそうな顔が目に映った。
「………電気、消すよ」
そんな顔見たくない。
結婚したって幸せに出来ない男なんてさっさと切り捨てりゃいいのに。
あいつのことで泣きそうな顔なんて見たくなくて
テーブルに手を伸ばし、照明のリモコンを押して
そっと電気を消した。
━━━Fin.
最初のコメントを投稿しよう!