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その時、
不意に遠くの空に、何かが見えた。
遠く、遠くの空に。
それは、徐々に近づいてきた…。
私はただ、仕事の昼休みの時間に街を歩いていただけだった。
だが、それはいつの間にか、私のすぐそばまで近寄ってきて、
私を攫った。
空の彼方へ。
それは、
大量の傘の群れだった。
相当に夥しい数の傘の群れ…。
傘の大群は、どんどん私を連れて空の彼方まで飛翔した。
訳がわからなかった。
私は拘束され、傘の大群と共に今、空を舞っていた。
何が起こっているのか、理解出来ない。
私は、この地上から、完全に消滅してしまった…。
傘の大群は、私を拘束したまま、ひたすら空を舞い続けた。
地上の高層ビル群が、今では小さく見えるほどに、高く高く上昇し続けながら飛翔していった。
真下の都市空間がもう見えなくなった。
大量の傘の群れは、私を攫って、一体何処に連れて行く気なのか？
さっぱり訳がわからない。
それでも、宙空で吹いている、爽やかな風が心地よかった。
私は、ただひたすら大量の傘の群れと共に空を舞っていた。
だが、しばらくして、ふと真下の地上を見下ろすと、そこには全く見たことのない光景が広がっていた。
なのに、妙に記憶にあるような気がするのは何故なのか…？
私は不思議に思い、目を凝らした。
その時急に、大量の傘の群れはいきなり急降下し始め、まるで地上に落下し激突するのではないかと思うほどの勢いで激しい降下を繰り返した。
挙句、私を地上に放り投げたのだ。
ドスン！
私は地面に放り投げられて、しばらくは、あまりの理解不能な事の連続に呆然としながら、その場に倒れ続けていた。
大量の傘の群れは、地面スレスレの至近距離まで降下して私を投げ出したので、私の身体に不備はなかったが、ただひたすら頭の中は混乱し続けていた。
その上、いつの間にか、あの夥しい数の大量の傘の群れは、すでに何処にもいなくなってしまっていたのだ。
傘の群れは、完全にその場から消滅していた…。
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